日本人が海外不動産で損をする典型パターン──その理由と回避策を徹底解説

第10回:日本人が海外不動産で損をする典型パターン──その理由と回避策を徹底解説

こんにちは。これまでフィリピンのプレビルド不動産への投資経験から、学んだ教訓を記事にしてきました。今回はその集大成ともいえる内容として、「なぜ日本人は海外不動産で損をしやすいのか」というテーマを徹底的に掘り下げていきます。

この記事は日本人が陥りやすい典型パターンを具体的に紹介しながら、それぞれの回避策も提示していきます。海外投資初心者の方はもちろん、すでに投資を始めている方にも役立つ内容を目指しています。


1. はじめに:日本人が“損をする”のはなぜか?

日本人は真面目で勤勉。ですがその“良さ”が海外では裏目に出てしまうことがあります。

海外不動産の世界では、文化・法制度・契約慣行・情報精度などが日本とまったく異なります。しかし、多くの日本人は「日本基準」で安心を求め、日本語で対応してくれる業者や代理店を過信してしまいがちです。

その結果、現地事情の理解不足、出口戦略の未設定、高すぎる手数料、為替リスクの見落としなど、本来避けられるリスクに直撃してしまうのです。


2. パターン①:信じすぎる(日本語対応だけで契約)

「日本人がいるから安心」「日本語の契約書があるから安全」──こうした安心感は、時に判断力を鈍らせます。

私も実際、フィリピン現地のデベロッパーSMDCの物件を、日本の不動産会社を通じて購入しましたが、現地との直接やりとりが一切なく、実態の確認もできませんでした

信じることは大切ですが、確認と疑うことも必要です。最低限、

  • 現地の契約書とその英語原文の確認
  • 直接現地デベロッパーに連絡してみる
  • 物件の現地写真や映像、レビューの確認

などを行うべきです。


3. パターン②:出口戦略の欠如

「買ったあとのことは買ってから考える」は日本国内では成立しても、海外では致命的です。

海外不動産では、売却や賃貸の手段が限られる国も多く、流動性が低いことも珍しくありません。特にプレビルド(完成前物件)は、完成直前に売りに出す日本人が集中し、供給過多になって買い手がつかないということも。

出口を考えずに購入すると、「完成しても売れない」「賃貸に出すにも管理手段がない」という状態に陥ります。

出口戦略とは:

  • 誰に・どの価格帯で・どんな手段で売却できるか
  • 現地の仲介会社やポータルでどう売るか
  • 賃貸で運用する場合、管理会社の目処があるか

を明確にしておく必要があります。


4. パターン③:プレビルド信仰

「完成前に安く買って、完成後に高く売る」──プレビルドの典型的な成功パターンです。しかしこれは、常に成功するわけではありません

私の経験では、完成直前になっても価格は上がらず、むしろ販売価格を下げざるを得なくなりました。しかも、買い手が現れず、結局損切りのような形でキャンセル・返金申請をすることに。

プレビルドには:

  • 完成の遅延
  • 価格の不確実性
  • 賃貸需要の予測不可能性

といったリスクがあります。完成後の保有を視野に入れられない人には、極めて危険な投資スタイルです。


5. パターン④:通貨・為替リスクの軽視

海外不動産では、為替の変動がダイレクトに損益に直結します。たとえば、フィリピンペソで売却しても、日本円に換算したときに利益が出ていないケースも多々あります。

私が契約した当時は、1ペソ=2.3円程度でしたが、その後円高になれば、いくら現地通貨で得していても、日本円では赤字になる可能性があります。

為替はコントロールできないリスクであることを前提に、

  • 為替ヘッジを行う
  • 円換算での損益も常に確認する
  • 外貨口座などを活用する

といった対応策が必要です。


6. パターン⑤:現地文化・市場の無理解

フィリピンでは「ローンを組んで投資用不動産を買う」という文化はあまり一般的ではありません。また、人口が増えていても、富裕層しかコンドミニアムを買えない現実もあります。

つまり、「都市人口増=不動産価格上昇」とは限らず、実際の購買層や流通実態を無視した投資は極めて危険です。

また、賃貸マーケットも信用力や契約文化が日本とは大きく異なるため、貸し出しても家賃未払い・管理放置といったトラブルに見舞われる可能性があります。

文化理解・生活感覚の把握は、成功の前提条件です。


7. パターン⑥:信頼できる現地パートナー不在

私の投資でも、最もストレスを感じたのがここです。日本の不動産会社を通じていたため、現地で何が起きているのか常に見えない状態でした。

質問しても回答が遅い、現地の販売状況もわからない、SMDCに直接問い合わせても無反応──これでは、意思決定のしようがありません。

信頼できる現地パートナー(不動産会社、ブローカー、弁護士など)がいない状態での海外投資は、目隠しで車を運転するようなものです。

最低でも、

  • 日本語が通じなくても誠実に対応してくれる現地担当
  • 現地の契約制度や手続きを説明できるパートナー
  • 物件周辺のマーケット情報を持つプロフェッショナル

が必要です。


8. パターン⑦:税制・法制度の誤解

フィリピンでは、売却益や賃貸収入に対する税率が日本と異なります。さらに、プレビルドキャンセル時の返金を定めた「マセダ法」など、独自の法制度も存在します。

私はこのマセダ法を適用することで、支払った金額の半分を返金申請できましたが、日本の不動産会社からその情報は提供されず、自分で調べて手続きを開始しました。

税制や法制度を正しく理解していないと、本来得られるはずの権利や控除を逃すことにもなりかねません。


9. 私の体験:7つのうちいくつに当てはまったか?

結論から言えば、私はこの7つのパターンのうち、6つに該当していました。唯一避けられたのは「法制度の無理解」で、これは自己調査により回避できた部分でした。

以下が私の失敗経験との照合です:

  • ① 日本語対応だけで契約 → ○
  • ② 出口戦略の欠如 → ○
  • ③ プレビルド信仰 → ○
  • ④ 為替リスク軽視 → ○
  • ⑤ 市場の無理解 → ○
  • ⑥ 現地パートナー不在 → ○
  • ⑦ 法制度の誤解 → ×(自力で調査)

つまり、ほぼ典型的な“損する日本人投資家”の道をたどっていたと言えます。これは非常に悔しいですが、同時に貴重な学びでもありました。


10. まとめ:損をしないための“反対アクション”

今回紹介した典型パターンに陥らないために、必要な反対アクションをまとめます:

  • 日本語だけでなく英語・現地語も使って情報収集
  • 買う前に出口戦略(売却・賃貸)を設計する
  • プレビルドは「保有もできる人」が選ぶ
  • 為替レートを常にチェックし、円換算でも評価
  • 現地文化・生活感覚を調査し、視察にも行く
  • 信頼できる現地パートナーを探す努力を怠らない
  • 契約・税制・法制度は必ず自分で理解する

海外不動産投資は、夢のある分野です。しかし、夢を見るには現実を直視する力も必要です。

この連載が、これから海外投資を目指す方の一助になれば幸いです。



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