第11回:海外不動産投資で“精神的に削られる瞬間”──心構えと乗り越え方
こんにちは。今回の記事では、これまでのフィリピン不動産投資で私が実際に体験した、“精神的に削られた瞬間”について深掘りしたいと思います。金銭的な損失だけでは語り切れない苦しさや不安、孤独感──それこそが、海外不動産投資の隠れたリスクです。
海外での物件購入は、多くの夢と期待を伴います。しかし、トラブルが起きたとき、頼るべき相手がいなければ、たとえ物件価格が数百万円でも、心の消耗は数千万円レベルのインパクトを持ちます。
この記事では、実体験をもとに精神的なダメージを受けた5つの瞬間と、それをどう乗り越えたのかを紹介します。これから海外投資に挑む方々にとって、事前に「覚悟すべきこと」「備えておくべきこと」が見えてくる内容になるはずです。
1. 現地デベロッパーから返答がない──連絡不通の恐怖
最も初期の段階で精神的に消耗したのは、フィリピンの大手デベロッパーSMDCに連絡しても一切返事がないという状況でした。
私は日本の不動産会社を通じて契約しましたが、「契約内容に誤りはないか」「支払いは正しく反映されているか」など、どうしてもSMDCに直接確認したいことがありました。ところが、問い合わせメールを何度送っても返答はゼロ。
この時、「本当に契約は成立しているのか?」「デベロッパー自体が実在しているのか?」というレベルの不安にまで陥りました。日本では考えられない“無視”という事態が、海外ではごく普通に起きる──それを身をもって知った瞬間でした。
2. 価格が下がり続けても誰も助けてくれない
プレビルド物件の完成が近づいてきた2024年後半、私は売却の準備に入りました。しかし、いくら待っても物件価格が上がる気配はなく、むしろ供給過多で価格が下がっていくばかり。
焦った私は、日本の不動産会社に「早めに売却を」と提案しましたが、返ってきたのは「まだ様子を見ましょう」「大丈夫ですよ」のひと言ばかり。具体的な売却戦略も、動きも、一向に見えない。
「誰もこの損失の責任を取ってくれない」「気づけば、自分だけが泥沼に足を取られている」──そんな孤独感が心をむしばんでいきました。
3. 売却活動で音沙汰なし、状況がわからない
売却活動を始めてからも、不動産会社からは一切進捗報告がありませんでした。こちらから連絡しない限り、「誰が、どこで、どのように売却活動をしているのか」さえ教えてもらえない。
毎日、不動産ポータルやSNSでMint Residencesの情報を自分で検索する日々。何のために高い手数料を払ったのか──そう思わずにはいられませんでした。
不透明な状況が続くと、自然と心は疲弊していきます。なぜなら、「期待」も「判断」もできないからです。
4. 他人に相談できない孤独
海外不動産の話は、周囲の人に相談しづらいものです。家族にも「損したくないという思いでやってる」としか言えず、友人にも「なんでそんなリスクある投資したの?」と思われたくない。
結果、苦しい状況を抱えていても、自分の中に押し込めるしかなくなります。これは本当に辛い状態です。メンタル面で支えてくれる人がいないと、選択肢の幅もどんどん狭くなり、視野が曇っていくのです。
5. 日本の不動産会社も頼りにならない
「海外投資はリスクがある。でも日本の会社が仲介してくれるなら安心だろう」──私もそう信じていました。
しかし現実には、日本の会社は「販売」には強くても「売却」や「トラブル時の対応」には非常に弱いことを痛感しました。私の担当営業は購入後すぐ退職し、代わりの担当も受け身な対応ばかり。
「大丈夫です」とは言われるが、その根拠や行動は見えない。最終的に、マセダ法の手続きもすべて自分で進める羽目になりました。高額な手数料を支払っていたことを思い出すたび、悔しさと苛立ちがこみ上げました。
6. なぜ精神的に削られるのか?
ここまで紹介してきたような事態が、なぜ私たちの心を追い詰めるのか。それは、次のような要因が複合的に絡み合っているからです。
- 情報格差:現地の状況がまったく見えない
- 言語と文化の壁:問い合わせすらまともにできない
- 孤立感:誰にも相談できず、責任は自分だけにのしかかる
そして何より、「自分の判断ミスだったのかもしれない」という自己否定感が、最も深く心を蝕んできます。
7. どう乗り越えるか──私が実践したこと
私は、以下のようなことを実践することで、徐々に心のバランスを取り戻していきました。
- 「もう取り返せない」と一度割り切る
- 損失を“勉強代”として意味づける
- 同じような経験者のブログやYouTubeを見て、共感を得る
- 小さくても、自分で情報収集して状況を前に動かす
動けることから動くことで、「自分の投資に向き合えている」という実感が少しずつ不安を和らげてくれました。
8. 海外不動産に必要な“撤退基準”
最も重要なのは、「どこで損切りするか」「撤退するか」の基準をあらかじめ考えておくことです。
私の場合、完成前の段階で「売却益が見込めない」「現地対応も見込めない」ことから、プレビルドのキャンセル(マセダ法の適用)を選びました。損失は大きいですが、これ以上心が削られることのほうがリスクだと判断したのです。
“損失を最小限にとどめる”ことは、“未来を守る”ことでもあります。
9. 精神的ストレスとの向き合い方
海外投資では、「ストレスはつきもの」と最初から受け入れる姿勢が大切です。
- いつでも撤退できるよう、金額は“最悪ゼロでもいい”レベルに抑える
- 1人で抱えず、第三者や専門家に相談する体制を作っておく
- 「想定外」は必ず起こると理解しておく
こうした備えをしておくだけで、精神的ストレスは大きく減ります。
10. まとめ:損失以上に苦しかった“心の損失”
私はこの投資で、金銭的には約220万円の損をしました。しかし、3年間の不安とストレスは、それ以上の負担だったと思っています。
「金は取り戻せても、時間と心は取り戻せない」──それがこの投資の最大の教訓でした。
これから海外不動産に挑戦する方へ。金銭的な準備だけでなく、「精神的耐性」や「相談できる環境」もぜひ整えてください。
そして、自分を責めすぎず、必要であれば、途中でやめることも勇気ある判断です。
次回は「海外不動産投資のリスク別マトリクスと難易度分類」をテーマにお届け予定です。