第6回:日本の不動産投資と海外プレビルド投資の違いを徹底比較
こんにちは。これまでフィリピン不動産をめぐるプレビルド投資の体験談と、その失敗までの流れを連載してきました。
第6回となる今回は、日本の不動産投資と海外プレビルド投資(特に東南アジア)を比較し、なぜ自分にはどちらが向いていたのか、そして今後どちらを選ぶべきかという視点でまとめてみたいと思います。
1. 投資の目的と収益構造の違い
日本の不動産投資は、主にインカムゲイン(家賃収入)を目的とした運用が中心です。利回りは5〜7%が現実的なラインで、長期保有を前提に資産を安定的に増やしていくスタイルが主流です。特に、都心のワンルームマンション投資や中古戸建ての再生など、比較的少額から始められる手法も充実しています。
一方、海外のプレビルド投資は、キャピタルゲイン(値上がり益)を目的とするケースがほとんど。完成前に安く仕入れて、完成後に高く売却することが前提です。うまくいけば利回り20%超も狙えますが、リスクは圧倒的に高くなります。価格の下落、売却先の不在、為替変動など、予想外の事態により利益が吹き飛ぶリスクもあります。
安定収益 vs ハイリスク・ハイリターンという構造上の違いがあるため、そもそも投資のスタンス自体が大きく異なります。自分が“何を求めるか”を明確にしておかないと、後から方向性のズレに気づくことになります。
2. 契約・法制度・所有権の透明度
日本では宅建業法や借地借家法などによって、購入・賃貸・管理のすべてに明確な法制度があります。書面契約の整備、登記制度の整合性、税務申告まで一連のルールが整っており、法的なトラブルは最小限に抑えられます。
一方、フィリピンなどのプレビルド投資では:
- 外国人が土地を所有できない(コンドミニアムのみ)
- 契約書の英語表記・曖昧な条文
- キャンセル・返金ルールの不明確さ
私もマセダ法という“救済措置”にたどり着くまでに相当時間がかかりました。「契約=安心」ではないという現実が、海外では当たり前に存在します。さらに、現地の法律事務所や行政手続きは時間がかかることが多く、英語力だけでなく、根気も試される場面が多々ありました。
3. 管理・運用・トラブル対応
日本では、賃貸管理会社に任せてしまえば、家賃集金・入居者対応・原状回復などをパッケージで委託できます。連絡もスムーズで、日本語で完結します。管理費も明確で、月額数千円で安定運用が可能です。
対して海外不動産では、物件完成後の賃貸管理や入居対応、売却活動は基本的に現地任せになります。信頼できる現地パートナーを見つけることができればいいですが、その見極め自体が非常に困難です。
- 言語の壁
- 現地に信頼できるパートナーがいない
- 日本時間との時差・文化ギャップ
こうした運用の難しさが、収益以上に精神的な負担となることもあります。私も、現地のデベロッパーからの返信が2週間なかったときは、本当に不安でした。担当者の退職や引き継ぎミスなど、日本では考えられない問題も実際に起こります。
4. 情報の透明性と信頼性
日本の不動産は、SUUMO、楽待、健美家などのプラットフォームで透明な相場情報を確認でき、統計も豊富です。過去の売買履歴、賃料相場、物件の瑕疵情報なども比較的容易に手に入ります。
一方で海外、とくに発展途上国では情報の非対称性が非常に大きく、販売会社のシミュレーションや価格が妥当かを確認する術が限られています。インターネット上の情報も少なく、現地語のニュースや政策動向まで含めてチェックできる人はごく一部に限られます。
「なぜこの価格なのか」「他の部屋と比べてどうか」といった疑問があっても、明確な答えが得られないことが多く、結果として“言われるままに買ってしまう”リスクが高まります。投資判断の根拠が非常に曖昧なまま進んでしまうのは、後から大きな後悔に繋がりかねません。
5. 精神的なストレスの差
日本での不動産投資では、定期収入が見込める安心感、管理会社との日本語対応、トラブル時の迅速な対応があります。これは、投資という行為において非常に大きなメリットです。たとえ収益が低くても、ストレスの少ない運用ができることは非常に価値があります。
私が海外プレビルドで最もきつかったのは、「価格も動かない・売れない・情報が来ない」中で毎月の支払いを3年間続ける不安でした。さらに、購入先の日本の不動産会社からはサポートがなくなり、自分一人で契約内容を確認したり、英語で交渉したりしなければならないこともあり、精神的に非常に疲弊しました。
実体験で分かった「自分に合う投資」
海外投資に夢を抱いて飛び込んだ私ですが、最終的に得た結論は:
・現地に精通している or 視察・交渉できる人向けが海外
・安定運用・精神的安心を重視するなら日本国内
ということです。
もちろん、将来的に海外での生活や事業を予定している人にとっては、海外不動産の意味は大きいでしょう。しかし、私のように“外からの投資”を目指す場合は、そのハードルの高さをしっかり認識しておく必要があります。海外不動産は、情報の距離と実務の距離が、そのまま投資リスクになります。
まとめ:投資は「性格と目的」で選ぶ時代
日本と海外、どちらが良い・悪いという話ではありません。重要なのは、自分の目的、性格、耐性に合った投資を選ぶことです。
私にとっての今回の経験は、金額以上に「知識の重要さ」と「安心感の価値」を学ぶ機会でした。今後は、日本国内での堅実な投資を軸にしつつ、海外投資は“実際に現地で動ける範囲”に絞って慎重に検討していく方針です。
次回は、今回の投資体験から学んだ「私の投資戦略の今後」について、リアルに語っていきます。